暗号資産会計では、従来の会計にはない特徴的な勘定科目が必要になります。この記事では、暗号資産取引で使用する勘定科目の種類と、それぞれの設定方針について詳しく説明します。
⚠️ 注意
本稿で示す勘定科目名・科目区分はあくまでも参考例です。実際の仕訳を起票する際は、個社の業種・取引実態・会計方針を踏まえ、税理士・公認会計士など専門家の確認を行ってください。 本ドキュメントは ASBJ 実務対応報告第 38 号および国税庁 FAQ を参照し作成しています。また、暗号資産会計は明確にルールが定められていないため、今後のアップデートにより内容が変更される可能性がございます。
勘定科目体系を整理する4つのグループ
暗号資産取引を仕訳に落とし込むときには、資産としての暗号資産 と 売買・評価による損益 が中心になります。ただし、銀行預金や外注費と同じく「相手科目」も必要です。下表は、暗号資産に関係する勘定科目を4つのグループに分類したものです。
| 勘定科目タイプ | 主な科目例 | 用途 | 設定場所 |
|---|---|---|---|
| 売買・評価損益科目 | 暗号資産売買等/売買等損 暗号資産評価益/評価損 | 暗号資産売却時や期末時価評価時の損益勘定科目 | 会社設定 → 仕訳/勘定科目 |
| トークン勘定科目(資産科目) | 暗号資産(ETH・BTC・USDC…) | 各暗号資産の資産科目 | 会社設定 → 仕訳/勘定科目 |
| 取引所預け金勘定科目 | bitFlyer・Coincheck など | 取引所口座の現金科目 | 会社設定 → 仕訳/勘定科目 |
| 相手勘定科目 | 売上高・外注費・支払手数料 など | 個別取引の相手科目 | 取引管理画面 |
RIKYUでは取引に対して自動で勘定科目を付与することができます。勘定科目の自動設定方法は下記をご確認ください。
仕訳/勘定科目タブの使い方
売買・評価損益科目
トークンの売買時と期末時価評価時の2種類存在します。 損益区分は売買目的や資金決済目的での保有の場合は営業外損益(営業外収益/営業外費用)、暗号資産交換業者やトレーダーのように売買自体が営業活動である場合は営業損益とみなす余地があります。 そのため科目設定と区分は企業の業種・保有目的に委ねられ、実務指針や税務上の取り扱いに沿って「営業外」に置くケースが大半です。
実際の勘定科目名について
| 区分 | 推奨科目名 | 税区分 |
|---|---|---|
| 売買益 | 暗号資産売買等益 | 対象外 |
| 売買損 | 暗号資産売買等損 | 対象外 |
| 評価益 | 暗号資産評価益 | 対象外 |
| 評価損 | 暗号資産評価損 | 対象外 |
勘定科目は具体的に指定されていませんが、一般事業会社(暗号資産交換業者でない企業)の実務では「暗号資産売買等損益」、「暗号資産売却損益」など独自の勘定科目を作成し、 損益区分は 営業外損益(営業外収益/営業外費用) に計上するのが通例です。
RIKYUでは、デフォルトの勘定科目名を「暗号資産売買等損」「暗号資産売買等益」を利用しています。
ワンポイント 利益と損失を 1 科目で管理したい場合は 「暗号資産売買等損益」「暗号資産評価損益」 を使い、利益は貸方・損失は借方に振り分ける方法もあります。
税区分の考慮事項
売買損益
- 一般的な税区分: 「対象外」
- 理由: 純額損益は「資産の譲渡等」ではなく評価差額であるため課税対象外
評価損益
- 一般的な税区分: 「対象外」
- 理由: 評価替えは実現取引ではないため課税対象外
トークン勘定科目(資産科目)
資産側である、暗号資産の勘定科目を指します。この仕訳を計上する際も、暗号資産の管理粒度によって勘定科目名や補助科目を用いて管理されることが多いようです。 具体的には、個別管理方式、統一管理方式、ハイブリッド方式などがあります。RIKYUのデフォルトでは個別管理方式を採用していますが、設定で変更可能です。
設定方針の選択
トークン別管理方式(デフォルト)
- 勘定科目名: 各トークンシンボル(「BTC」「ETH」「USDC」「WETH」「WBTC」等)
- メリット:
- トークンごとの簿価を会計システム上でも管理可能
- 詳細な残高管理が可能
- デメリット:
- 保有しているトークンの種類が多い場合、勘定科目数が多くなる
- 適用例: 複数の暗号資産を保有しており、暗号資産会計システムで正確な取引を取得できる場合
ラップドトークンについて
WETHやWBTCなどのラップドトークンも、それぞれ独立した勘定科目として管理されます。ラップドトークンの詳細な取り扱いについては、ラップドトークンの取り扱いについてをご参照ください。
統一管理方式
- 勘定科目名: 全てのトークンを「暗号資産」で統一
- メリット:
- シンプルで管理しやすい
- 勘定科目数を抑えられる
- デメリット:
- 会計システム上で各トークンの簿価残高が把握できない
- RIKYUのような暗号資産会計システムと会計システム間の差異把握が困難
- 適用例: 取引量が少ない場合、暗号資産の種類が限定的な場合
ハイブリッド方式
- 勘定科目名: 勘定科目名を「暗号資産」とし、補助科目でトークン名を設定(暗号資産[ETH], 暗号資産[SOL],など)
- メリット:
- 勘定科目数を抑えたまま補助科目で暗号資産ごとの残高を会計システム上で管理することができる
- デメリット:
- 補助科目の運用を定めていない企業は運用コストが増える
- 適用例: 総勘定元帳の見出しは暗号資産として一括で表示し、かつ会計システム側でトークン別の簿価残高を把握したい場合
トークン別×ウォレット別管理方式
- 勘定科目名: ウォレット名を勘定科目、トークン名を補助科目(Metamask[ETH], Metamask[SOL],など)、または勘定科目と補助科目を逆で運用
- メリット:
- 会計システム側でもウォレットごと、暗号資産ごとの残高を管理することができる
- デメリット:
- 勘定科目、補助科目の適用ルールを設定しないといけない
- 管理する勘定科目、補助科目が爆発的に増える恐れあり
- 適用例: 詳細に暗号資産を管理したい場合
取引所預け金勘定科目
暗号資産取引所の現金口座の預け金残高を表現する勘定科目です。取引所でBTCを購入した際や、銀行口座から取引所口座へ送金した際の仕訳で用いられます。
設定方針の選択
個別管理方式(デフォルト)
- 勘定科目名: 取引所名(「bitFlyer」「bitbank」「Coincheck」等)
- メリット:
- 取引所別の残高管理が明確
- freee会計における銀行口座の勘定科目の管理と統一性を持たせられる
- 適用例: freee会計と管理粒度を合わせたい場合
統一管理方式
- 勘定科目名: 「暗号資産取引所」「預け金」等で統一
- メリット:
- シンプルな管理
- 勘定科目数の抑制
- デメリット:
- 取引所別の残高把握が困難
- 適用例: シンプルに管理したい場合
ハイブリッド方式
- 勘定科目名: 勘定科目名を「預け金」とし、補助科目で取引所名を設定(預け金[bitFlyer], 預け金[Bitbank],など)
- メリット:
- マネーフォワードにおける銀行口座の勘定科目の管理と統一性を持たせられる
- 適用例: マネーフォワードと管理粒度を合わせたい場合
相手勘定科目
トークンを用いて支払いや収入があった場合の取引に関する勘定科目を指します。
- ガス代:支払手数料、取引手数料
- ステーキング報酬:雑収入、受取利息
- 取引先への支払い:外注費
ケース別の仕訳例
暗号資産取引における各勘定科目タイプの使用例を示します。
前提(採用している勘定科目方式)
- 売買・評価損益科目: 利益・損失を分けた個別科目方式
- トークン勘定科目(資産科目): トークン別管理方式
- 取引所預け金勘定科目: 個別管理方式
ケース1: 暗号資産の売却
状況: 1ETHを60万円で売却、平均取得価額は40万円
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| bitFlyer | 600,000円 | ETH | 400,000円 |
| 暗号資産売買等益 | 200,000円 |
- bitFlyer→取引所の日本円勘定科目
- ETH→トークン勘定科目
- 暗号資産売買等益→損益発生時の勘定科目
ケース2: ステーブルコインで入金
状況: 100USDCを15,000円で売上入金。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| USDC | 15,000円 | 売上高 | 15,000円 |
- USDC→トークン勘定科目
- 売上高→取引別の勘定科目
ケース3: 期末時価評価
状況: 期末日において、1ETH(簿価40万円)を50万円で評価。翌期首に洗替仕訳。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| ETH | 100,000円 | 暗号資産評価益 | 100,000円 |
| 暗号資産評価益 | 100,000円 | ETH | 100,000円 |
- ETH→トークン勘定科目
- 暗号資産評価益→損益発生時の勘定科目